不動産を持つ会社を買うときは「物件価格」だけを見ない――法人M&Aのデューデリジェンス
不動産売買と会社売買は根本的に違う
ホテル、店舗、一棟ビル、事業会社などでは、不動産そのものを売買する方法だけでなく、その不動産を保有する会社の株式を譲渡する案件があります。しかし株式取得では、不動産だけを取得するのではなく、原則として会社が持つ資産、契約関係、借入、債務、税務上の問題などを含む法人そのものを引き継ぎます。
物件デューデリジェンスだけでは足りない
中小企業庁は事業承継ガイドライン、中小M&Aガイドライン、中小PMIガイドラインなどを公開し、第三者承継やM&A後の統合作業を含む実務整備を進めています。不動産保有会社の取得でも、宅地建物としての調査に加えて法務・財務・税務・事業の各デューデリジェンスが重要です。
確認する主な領域
- 不動産の登記、担保、賃貸借、修繕状況
- 銀行借入と財務制限条項
- 未払税金、税務申告、潜在的税務リスク
- 取引先、従業員、許認可に関する契約
- 株主構成、過去の株式移動、議事録
- 簿外債務、訴訟、保証債務
例えば会社が所有するビルの時価が10億円でも、借入金や未払債務が大きければ株式価値は10億円ではありません。反対に現預金やその他の資産があれば、それらも株式価値に影響します。したがって「不動産価格=会社価格」という計算はできません。
クロージング後まで設計する
M&Aでは株式譲渡契約締結が終点ではありません。銀行との関係、代表者変更、賃貸管理、会計、従業員、主要取引先などを引き継ぐPMIも必要です。また契約上のチェンジ・オブ・コントロール条項によって、株主変更時に承諾等が必要になる場合があります。
不動産保有会社を取得する場合は、不動産鑑定だけでなく会社の貸借対照表と契約関係を一体で確認し、専門家による法務・税務・会計調査を行った上で価格と契約条件を決めることが基本です。
公的情報源・確認情報
2026-09-12