不動産を買うのか、会社ごと買うのか――不動産保有会社M&Aで確認すべきデューデリジェンス
「物件取得」と「会社取得」はまったく違う取引
収益ビルやホテル、事業用不動産を取得する場面では、不動産そのものを売買する方法だけでなく、その不動産を所有する会社の株式を取得する方法が提案されることがあります。株式取得では不動産の名義人である法人自体は変わらず、株主が変更されます。そのため賃貸借契約や取引関係を維持しやすいケースがある一方、不動産以外の会社の過去の債務や契約関係まで引き継ぐ点が最大の違いです。
不動産だけを見て株式価格を決めてはいけない
不動産保有会社の価値を考えるとき、建物の時価から借入金を引けば概算純資産を計算できます。しかし実際には未払税金、敷金返還債務、訴訟、役員貸付、簿外債務、修繕義務などが存在する可能性があります。また帳簿上の不動産価格と市場価格も一致しません。そのため不動産鑑定的な評価と、財務・税務・法務デューデリジェンスを分けて実施する必要があります。
確認すべき主な項目
- 不動産登記と抵当権・担保状況
- 金融機関借入と株主変更時の条項
- 賃貸借契約、敷金、滞納、紛争
- 固定資産税・法人税等の申告納付状況
- 未払債務と簿外債務
- 修繕履歴、建築・消防上の問題
- 株主、役員、関連当事者取引
M&A仲介会社に任せきりにしない
中小企業庁の中小M&Aガイドライン第3版では、仲介者・FAの手数料や利益相反、最終契約上のトラブル防止などについて留意事項が示されています。仲介会社が案件を紹介している場合でも、買主自身の税理士、弁護士、司法書士、建築士などを必要に応じて利用し、独立した立場で検証することが重要です。
融資契約のチェンジ・オブ・コントロールも確認
法人が銀行融資で不動産を保有している場合、株主変更や支配権変更について銀行承諾が必要な契約となっていることがあります。「法人名義が変わらないから銀行手続は不要」と決めつけることはできません。株式譲渡契約を締結する前に融資契約を確認し、必要な承諾をクロージング条件にします。
まとめ
不動産保有会社M&Aは、単純な不動産売買とは異なり、物件と一緒に会社の歴史を引き継ぐ取引です。価格だけで判断せず、不動産、財務、税務、法務、融資を横断して調査し、表明保証、補償、前提条件を最終契約に反映することが重要です。